山野 輝慈 2022年製が入荷しました。

[楽器情報]
山野輝慈 製作 ハウザーモデル 2022年 No.404 Used です。邦人製作家の中では最長老の、しかも60年もの間弛緩することなく充実した製作(近年は年に一本ペースでの製作と言われていますが)を続けてきた大ベテランの、確かな仕事を見ることのできる一本です。本作が作られたのは氏が79歳の時で、厳密に言えば工作の隅々まで精緻さが行き渡っているとは言えない部分があるものの、それを十分に補うほどの手仕事ならではの滋味あふれる肌理と、この製作家独自の音響美学を感じ取ることができる一本となっています。

よく言われているように、そのキャリア初期~中期においてイグナシオ・フレタあるいはエルナンデス・イ・アグアドの構造にアプローチすることで自分なりのスペイン的音色の解釈を試みていた氏が、やがてヘルマン・ハウザーの(もちろん1世の)音響美学へと近づいてゆくこと自体は国内外を問わずギター製作家にとって珍しいことではないのですが、そのオマージュモデルで現れてくるものはハウザー的構造原理(ほぼ忠実に1937年製セゴビアモデルになぞらえています)と山野氏自身の音色嗜好との不思議なブレンドともいうべきもので、同種のモデルの中でも独特の佇まいを醸し出すに至っています。

ハウザー特有の全体に位相差のない音響設計が構築されていますが、オリジナルハウザーの硬質さや粘り、洗練された音像、その重力性と高い密度とは異なり、倍音がやや多めの解放的な放射感のある発音となっています。その響きは木の感触がよく出ており、表情の変化も自然で、そして渋い。ハウザー鉄壁の構造に、木の本質的な自然さ(コントロールできない部分も敢えて含め)を慎ましく加味し、抑制と解放感が同居したような不思議なハウザーモデルとして着地しています。

全体は出荷時のままのセラック塗装仕様、割れや改造等の大きな修理履歴はありません。表面板の指板両脇やサウンドホール周り、駒板下部分などに軽微なキズが少々と、ネック裏の高音側にはまんべんなく爪のあとがありますがとても細かく浅いものなのでさほどに目立たず、また演奏時にもほとんど気にならないレベルです。横裏板はとてもきれいな状態。ネック、フレット等演奏性に関わる部分も良好です。ネックシェイプは薄めのDシェイプで角の取れた丸みのある形状、弦高値は3.1/4.1mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は3.0~3.5mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することも可能です。糸巻はドイツ製の高級ブランド Scheller 製のハウザーモデルを装着、こちらも現状で機能的に良好です。楽器重量は1.53㎏。