デビッド・ホセ・ルビオ 1971年が入荷しました。

[楽器情報]
デビッド・ホセ・ルビオ 製作 1971年製 Usedです。ラベルはかなり傷んでおりますが本人サインが確認できます。また表面板内部の高音側にも年式と本人サインがあります。表面板はセラック塗装ですが横裏板は過去にラッカーによる再塗装が施されています。表面板全体に弾きキズ、スクラッチあと、打痕等大小長短のものが経年相応にあり、また演奏時に右ひじの当たる部分は塗装の摩耗と変色が生じています。横裏板は衣服の摩擦あとや裏板の中央部分などに細かな打痕が集中していたりなどしています。ネック裏はきずはほとんどありません。全体に経年相応の使用感はあるものの割れなどの大きな修理履歴はなく、またネック・フレットなどの演奏性に関わる部分も良好な状態を維持しています。

ルビオはそのキャリア初期となる1960年代後半のニューヨーク時代からイギリスに帰国してのちの1970年代にかけての短い期間でも実はかなり大きな作風の変容を見せていくのですが、1971年の本器においてはその過度期ともとれる特性が見て取れます。ジュリアン・ブリームが適切にその響きを「銀鍾のような」と表現したルビオのニューヨーク時代の最良のものは、その言葉の通り濃密さと拡がりと輝き(しかしどこか翳も含んだ)とによって特徴づけられる、ほとんどギターならざる美しさを有した響きの楽器でしたが、イギリス時代に入ると響き全体が太くなり、弦楽器的な木質の味わいが濃厚なギターへと変わっていきます。

スペインギターに特有の発音の際の「粘り」や「反発感」あるいは弦の弾性感やアタック感とも異なる、まさしく鐘を鳴らす(叩く)ような発音で、独特の倍音構成があり、基音があくまでもくっきりとしてシャープな身振りなのですが、同時に空間性があります。反応も速く、演奏をしていると両手ともに音が指の動きよりも先にどんどん出てゆく感覚があります。すべての音が同じ強度で鳴りますが、高さと低さのベクトルがあり、その高低のベクトルが和声感を生み出しています。これは例えばヘルマン・ハウザー的な音響とは異なる意味で鍵盤的であり、単音の楽音としての実在性が異様に高く、それでいて全体が互いに調和しているという、ルビオ独自の音響。本作はその響きにほのかに木質の温かみが加わっており、全体に太めの音になっています。

表面板力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に2本のハ-モニックバー。下側(ブリッジ側)にも1本のハーモニックバーを設置していますが低音側には4~5センチほどの幅で高さ数ミリの開口部が設けられています。扇状力木は左右対称7本が設置され、これらの下端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、そして上部を波型に加工したバーがブリッジプレート(サドル)と同じ線上に高音側だけに設置されており、7本の扇状力木のうち一番高音側の2本のみがこのバーを貫通しています。このバーと扇状力木との構造的な関係はロベール・ブーシェのいわゆるトランスヴァースバー(ブーシェのこれは表面板横幅ほぼいっぱいにわたって設置され、扇状力木すべてがこのバーを貫通する形になっている)に影響を受けながら、それを高音側だけに、しかも上部を波型に加工して設置するというクリエイティブな採用を行っています。さらにはこのバーはここでは力木と接触しておらず、開口部をぎりぎり通り抜ける形になっており、この点もブーシェ的設計と異なります。また7本の扇状力木は厳密には左右対称ではなく、一番低音側の一本はサウンドホール下側バーに設けられた開口部をくぐり抜けてホールの周りに貼られていり補強板の縁にまで延伸しており、またこの力木を最長として、高音側に行くに従って力木の長さが少しずつ短くなっており、一番高音側の1本は低音側のものの3/4ほどの長さになっています。レゾナンスはF#~Gの間に設定されています。

ネックはやや太めな感触ながらもDシェイプの薄く角の取れたラウンド感のある形状ですのでグリップ感は自然な感触です。弦高値は2.7/4.1mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmとなっています。糸巻はスペインのブランド Fustero のフレタタイプに交換されており、現状で機能的に良好です。