
ホセ・ラミレス 3世 1979年製が入荷しました。
〔楽器情報〕
ホセ・ラミレス3世 1A No.13209 1979年製Usedです。ボディ内部のネック脚部分には「18」のスタンプが押されており、これはブランド公式リストで Manuel Alonso Gimenez(MAG)による製作となっています。
1964年にその基本設計が完成され、1986年頃を境として弦長を664mmから650mmに短くすることで「C-650」という異なるアイデンティティを持つことになるモデル1Aは、このおよそ20年の間にも主に時代的な要請に合わせて設計や仕様を変え続けてきています。1960年代の末頃から70年代のラミレスではネックのボディに対する差し込み角が深くなり、同時に指板は6弦側から1弦側にかけてかなりの傾斜角で設定され、その結果弦高値が低音から高音かけて一気に低くなってゆくような独特の演奏性を確立します。またこれによって全体の立体感と音圧における迫力が更に増大し、この時期のコンサートギターにおける一つの定式を作り上げたと言えます。
響きに関しても1970年代前半までの、撥弦に対する響箱のパーカッシブな反応と、これでもかというほどの濃密なコクのある音(これこそが「ラミレストーン」という呼称を付されるきっかけになったのですが)とは異なり、表面板の弾性を活かした粘りのある発音と引き締まった音像が1979年製の本器においては魅力的な特質となっています。引き締まってはいてもやはりこのブランドならではの響箱の容量を活かしたたっぷりとした奥行きや密度はしっかりと備わっており、加えてタッチに堅実に反応する歌心も十全に聴かれるので、「ラミレストーン」をなんと言っても求めるこのブランドのファンの要求にも応えるものとなっています。さらに言えば高音が前景化しすぎてしまう(重心の位置が高めな)全体の音響設計になりがちなこのモデルにおいて、中低音~低音の適切な「低さと重さ」を備えた重心設定がなされており、十分な粘りをもった低音部からよく歌う高音部へ自然に移行し、音楽的にバランスフルな全体の響きとなっていることも特筆すべき点となっています。
機能性においてはタッチに対する反応が素晴らしく、たっぷりとした響きとともに「速さ」のベクトルを備えた音が指にシンクロするように現れてくるのがなんとも心地良い。深い角度で組み込まれたラミレス独特のネック設定は弦高値で表すまでもなく見た目でもアクロバティックとさえ言えるものですが、しかしながらこれがイメージするよりも実際は弾き易く、演奏性におけるラミレスの大胆な発想が逸脱をぎりぎりのところで避ける絶妙な設定で着地していることがわかります。ラミレスが機能的、設計的にかなり先鋭的な挑戦をおこないながら、その主眼とするところがあくまでもギターとしての表現性であったことは現在再考する十分な価値があると言えるでしょう。
裏板下部低音側に木目に沿って10cmほどの割れ補修歴がありますが適切な処置が為されており今後の継続使用には問題ございません。その他再塗装や改造などの大きな修理履歴はなく、経年数考慮すると良好な状態を維持しています。表面板は指板脇やサウンドホール周りに点のような小さく軽微な傷があるのみで、横裏板も衣服の摩擦等がわずかに見られるのみのきれいな状態です。ネックは厳密に言えばほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットもほんのわずかに摩耗見られますが演奏性や音には影響ありません。ネック形状は薄めのDシェイプで指板は若干のラウンド加工がされています。ナット幅は53mmであるの対しナット弦幅は45.5mmと広い設定になっています、ただしサドル上の弦幅は55.5mmと通常よりもやや狭い設定になっています。弦高は3.0/5.2mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰はありません。全体の重量は1.64㎏。