栗山 大輔 2026年製が入荷しました。

〔製作家情報〕                                 
栗山大輔 Daisuke Kuriyama 1981年生まれ。東京造形大学在学中に独学でギター製作を始めます。卒業後の2003年大手楽器店に入社し修理部門として10年以上従事し、そこで多くの国内外の名器を実地に研究する機会を得たことが、現在の彼の類まれなバランス感覚に支えられた音色への感性を育んだと言えるでしょう。在籍中に製作家の尾野薫を紹介され、2010年より尾野氏の工房にて直接指導を受けるようになります。その後独立し年間6~8本程のペースで極めて精緻な造作による上質なギターを製作。トーレス、ドミンゴ・エステソ、マルセロ・バルベロ1世モデル等のスペインの伝統工法に立脚した彼の楽器はどれも古き良きスパニッシュギターの味わいと響きが素直に体現されており、現在多くのジャンルのユーザーに愛されるブランドとなっています。2020年にはフランスの出版社Camino Verde刊 Orfeo Magazine No.15で彼のインタビューと楽器が紹介されました。

オルフェオマガジン「日本の製作家」特集掲載号 オンラインショップ商品ページはこちら

オルフェオ取材同行記 栗山大輔、清水優一、禰寝碧海編はこちら

〔楽器情報〕                                   
栗山大輔製作 80号マルセロ・バルベロ1世モデル 2026年製 No.131 新作の入荷です。その名のとおり20世紀スペインの名工中の名工マルセロ・バルベロ1世(1904~1956年 マドリッド)のオリジナル設計に忠実に、その音響的特徴に至るまでを極めて高純度に作り上げたオマージュモデルの傑作と言える一本です。栗山氏がトーレスから始まるクラシックギターの「正統」をまるでなぞるようにしてマヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデス、ドミンゴ・エステソ、ヘルマン・ハウザー1世へのすぐれたオマージュを製作していることは彼の製作哲学の具現的作業として知られるところですが、20世紀のちょうど真ん中でスペインギターの至高点となる仕事を残してその生を終えるバルベロ1世へのオマージュモデルは、氏のラインナップの中でも必然的に一つの到達点となる素晴らしいギターとなっています(氏はほかにも見事なロベール・ブーシェ オマージュを製作していますが、ブーシェでさえもバルベロ1世の影響下にあることはギター製作史の重要な点として確認しておくべきでしょう)。

歴史の上ではサントスの発想から出発し、それを洗練させ切った先に原理だけが生々しく姿を現したようなバルベロのギターの特徴は、撥弦の弾性と木の弾性とが反発しあい音を精製してゆくメカニズムにおける、いわゆる連成振動の極めて特異な凝縮点の設定ということになると言えます。バルベロのあの柔軟な硬質さともいうべき発音特性、それが生み出す音の彫りの深さ、ストイックでありながら十分すぎるほどにロマンティックな表情は、サントスが目指したギターの汎西洋化の一つの到達点とも言えるでしょう。

栗山氏は本器において、そうしたバルベロ的な特性を十全に備えつつ(これだけでもすごいことなのですが)、これを完璧な音響バランスの中にまとめ上げ、音の粒はきれいに揃い、さらには氏の特徴である明朗さ柔和さが加わり、誰もが心地良くそして深く音楽を楽しむことのできるギターとして自然に着地させています。

表面板力木配置ももちろんバルベロのオリジナルに準拠していますが、栗山氏が本器で採用しているのは後に弟子のアルカンヘルへと受け継がれることになるものとは若干異にしています。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、そして扇状力木は7本が左右非対称にして設置されているのですが、まずこのうち中央5本の力木がお互いにほぼ平行に近い角度で、ブリッジプレートの幅の中に納まるように中央寄りに配置されています(この5本に限って言えば完全に左右対称)。そしてこれら5本のさらに両外側に1本ずつ、他の力木の半分以下の長さしかない短い力木が設置されており、このうち高音側に設置されたほうは低音側のものよりもさらに短いものになっています。補強板はサウンドホールを取り囲むように1mmに満たない薄いものが貼られ、また駒板の位置にも同じ範囲を補強するように2mmほどのものが貼られているのですが、上記の扇状力木中央の5本によってセパレートされたようにして設置されており、これもバルベロの設計としては珍しいものとなっています。レゾナンスはGの下で、ほぼF#~Gの間の位置に設定されています。バルベロの設計のスタンダードとなっているものとしては、扇状力木は5本、そして2本の(それぞれの間隔が大きく開いた)クロージングバー、そして駒板位置に貼られた(セパレートしていない)一枚の薄い補強板というものがあります。実際に栗山氏もこの設計で製作もしていますが、本器の構造はスタンダードな設計における2本のクロージングバーが扇状力木として転用されたものとして見ることもできます。

全面セラックによる非常に美しい仕上げで、バルベロの特徴的なヘッドシェイプとロゼッタデザインも程よいアクセントとなり、全体に気品のある爽やかな佇まい。ネック形状はDシェイプのフラットでやや薄めの造り、弦高値は出荷時で3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット、サドル余剰は2.0mmほど)となっています。糸巻はGotoh 製を装着。ボディ重量は1.45㎏。