マヌエル・レジェス I 世 2007年製が入荷しました。

[製作家情報]                                   
マヌエル・レジェス Manuel Reye Maldonado 1934年グラナダ、パジェーナ生まれ。10歳の時にコルドバに移住し、その後亡くなるまで同地にて製作。もとはフラメンコ・ギタリストであった彼が、ある歌い手から譲り受けたぼろぼろのギターを自ら修理するもののその仕上がりに満足できず、それならばと独学で自分のギターを作ったのがきっかけとなり、製作の道に進みます。ホアキン・サンチェス・ガリステーロの工房で助言を得ながら製作技術を磨き、1949年から本格的にギター製作を開始。1956年にはギタリストのぺぺ・マルティネスの紹介で、マドリッドの名工マルセロ・バルベロ1世(1904~1956)の知遇を得ます。この稀代の製作家との、亡くなるまでのわずか1年という交流がマヌエルに決定的な影響を与えたことは有名な話。この時期彼は工房を何度か移転しており、1960年代に入って有名な観光地のポトロ広場近くの工房で一旦落ち着きますが、場所柄もあって人の出入りも頻繁な工房は彼にとって落ち着かず、1979年にはアルマ通り7番地の静かな環境に工房を移転します(これが彼の亡くなるまでの住処となりました)。ブランドスタート当初から順調にその評価を高め、多くのギタリストが彼のギターを購入しようと工房を訪れるようになりますが、何といっても1980年代に当時大人気ギタリストであったビセンテ・アミーゴが使用することでその名声がピークに達します。

フラメンコに必要な要素を十全に備えながら、その繊細とさえ言える音色と表現力、造りの細やかさ、高度な演奏性などでクラシックギタリストからも高い評価を得て、20世紀後半を代表するフラメンコブランドとなりました。2014年に惜しまれつつこの世を去った後、工房は子息のマヌエル・レジェス・イーホが受け継いでいます。

〔楽器情報〕
マヌエル・レジェス 2007年製 フラメンコ ブランカモデル Used です。
2014年に惜しくもこの世を去ることになるこの名工にとって、図らずも後期の作と位置付けられてしまう本作は、フラメンコギターにとっての洗練の意味を決定づけてしまうほどのクオリティに達しており、大変に素晴らしい1本となっています。

レジェスのギターがフラメンコとしての機能性や演奏性、身振りと表現力、音色とニュアンスを完璧に備えている上でさらに特筆される点としては、ややレトリックなあいまいさを含んだ言い方ですが、それは高貴なまでの非常な明晰さであると定義することができるでしょう。実際彼が作るギターはその製作時期に関わりなく、それこそ最初期の作からしてある種の高貴さが通底しており、言葉のように自在にニュアンスを変化させながらドライブしてゆくフラメンコ的疾走感と激しさのなかにおいてさえ美しさを感じさせるような、特別な魅力をもったフラメンコとなっています。
それは本器2007年製においてもしっかりと感じ取れるものであり、一切の雑味を排した響きと艶やかな音像が非常なうねりを生み出しながら鋭く疾走してゆく感覚はなんとも心地良いものがあります。その発音の速さと洗練、適切な粘りと瞬発力、両手の動きと完全一致するかのような非常なリニアニティの高さもやはり秀逸です。

表面板力木構造は、サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバーとロゼッタ直径とほぼ同じ幅の補強プレート、サウンドホール周りにロゼッタの範囲を覆うように補強プレートが貼られ、ホール下側(ブリッジ側)にも上側と同様に1本のハーモニックバーを設置、ここから下側は左右対称7本の扇状力木、駒板位置にはほぼ横幅いっぱいにわたって貼られた補強プレート(ただし短辺は駒板の2/3ほど)、そして7本の力木の下端近くでそれぞれの力木間を繋ぐように小さく非常に薄い補強プレートが計6枚貼られているという設計。他には見られない特徴としてはやはり7本の力木間を下端付近で繋ぐように貼られた6枚の補強板になりますが、これは位置的にはクロージングバーの設置位置にほぼ該当し、このバーの機能を応用したものと見ることもできます。またフラメンコとしては比較的珍しい駒板エリアの補強プレートの設置も、レジェスは早い時期から採用しているスペックだけに指摘しておくべきでしょう。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

およそ20年を経過したセラック塗装仕様のフラメンコモデルとしてはきれいな状態を維持していると言えます。裏板のセンターからわずかに数センチほど高音側のところに10cmほどの割れ補修履歴がありますがとても丁寧な修理が施されていますので(内側パッチ補強、塗装タッチアップ)外観的に目立たず、また今後の使用にも問題ありません。ただし処置のために注入した接着剤がサウンドホールラベルに染み出しており、ラベルの右側にその線が残ってしまっています。その他は割れや改造歴などはありません。表面板は指板脇からサウンドホール周りそしてゴルペの縁部分などは弾きキズがやや集中してありますがいずれも経年の自然なレベルで外観を損ねるほどではありません。裏板は縁に沿って細かなスクラッチキズありますがこれらも同様です。ネック裏は高音側に集中してまんべんなく爪キズありますが浅く細かいものなので感触的に気にならず、またやはり外観を損ねるほどではありません。ネック、フレットなどの演奏性に関わる部分も良好です。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。弦高値は2.8/2.8mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.0~2.0mmあります。糸巻はスペインの老舗ブランドFustero製を装着しています。