ビウダ・デ・マルセロ・バルベロ 1956年製が入荷しました。

〔楽器情報〕
ビウダ・デ・マルセロ・バルベロ 1956年製 クラシックモデルです。ラベルには(Arcangel Fernandez)とプリントされており、マルセロ・バルベロ1世の未完の楽器を弟子であるアルカンヘル・フェルナンデスが仕上げた1本。「ビウダ・デ ~」のラベルが付された同様のモデルは全部で8本あり、そのうち5本はフラメンコ、3本がクラシックとなります。本作はその3本のクラシックモデルのうちの一本、アルカンヘル本人によるとバルベロが急逝した直後に製作したもので、すべてのパーツはバルベロが実際に残していたものを使用しているとのこと。いかにもマルセロが好みそうな(審美的というよりもトーンウッドとしての性質的に)材によって作られており、もちろんボディ形状、ロゼッタやヘッドデザインそして内部構造に至るまでがマルセロ・バルベロのオリジナルスタイルで見事に仕上げられています。

同時にここにはアルカンヘルのスタイルの原型となるものもはっきりと刻印されており、まさにこの一本に、師弟であり、偉大な製作家でもある二人の貴重な共同作業、さらには製作史における20世紀の分節点としての、異様に濃密な音響を聴くことができます。

このシンプルですが特徴的な力木設計は歴史をさかのぼればトーレス以前の、例えばホセ・ペルナス(Jose Pernas)などのギターにまでさかのぼることも可能なのですが、これを音響の全き必然性において(つまり原理そのものとして)最初に完成させたのはサントス・エルナンデスと言えるでしょう。

マルセロはこの設計が必然的に生み出す音響の錬成を更に推し進めてゆきます。撥弦時に駒に集中するエネルギーを木質(硬いスプルース表面板)と構造体(強固な力木構造)によって瞬間的に密度を圧縮し、そうすることで力を増幅し箱を一体に響かせるのですが、ここでまさにバルベロだけがそれを可能にしたとしか思えないような、いささかも柔軟さを損なわない非常な硬質さという、独自の発音特性が生まれます。

アルカンヘルがこの特性を意識して製作していたことは間違いなく、本器においてもその方向性をしっかりと踏襲した音響で見事に着地しています。ただしここにはのちのアルカンヘルに顕著なストイックな厳格さ(強い反発感、粘りを伴った発音)とまではいかず、おそらくは経年の弾き込みにもよるのでしょう、タッチにヴィヴィッドに反応する高い音圧といかにもウッディな感触も魅力となっています。