
栗山大輔 2026年製が入荷しました。
〔楽器情報〕
栗山大輔製作 100号トーレスモデル 2026年製 No.129 新作です。近年の氏の仕事は誠に瞠目すべきもので、製作スタンスとしては変わらずにスペイン伝統工法とその音響をベースとした名工たちへのオマージュモデルをラインナップしていますが、それらの本質的な部分(特に音響における)を原理的に抽出し、非常な解像度で洗練させ、そして一個の充実した表現楽器として作り上げてしまう、その感性と技術の統合が最高度に達していると言えるものとなっています。
本器トーレスモデルはその証左ともなる充実した、魅力的な一本となっています。1864年製のオリジナルトーレスに準拠し、その力木設計や外観における意匠、ボディテンプレートなどは顕著にそれを受け継ぎつつ、ここに栗山氏ならではの、一旦すべてを解体し再構築したようなフレッシュな感覚が隅々まで行き渡っており、なんとも清新な楽器に仕上がっています。
まずは外観の、トーレス的としか言いようのない佇まいが素晴らしい。表面板の松と立体的な木目のフレイムメイプルの横裏板との対照による強い存在感、そこに薄緑、赤、黒を基調としたロゼッタやパーフリングなどの意匠を大胆さと抑制のぎりぎりのところで全体にちりばめて豪華さを演出、さらに裏板のセンターにはあのFE08 La Guitarra Cumbre を想起させる雷文模様をあしらっています。工芸品レベルの細工の精緻さも見事。特に薄緑による矢羽根模様は洒脱なアクセントとなっており、薄緑そのものの色味も実にセンスが良く、特別な味わいを外観全体に付与しています。
トーレスは何よりもギターという楽器における音の完璧なバランスを希求した人で、ここではその「自然な」響きを聴くことができます。彼の後に主にマヌエル・ラミレスらによってギターは一つの個体の中に異なるアスペクトを同時に有する楽器へとその時代性を反映して変化してゆきますが、トーレスにおけるギターはあくまでも一つの声を発する楽器として作られており、それゆえに親密で力強くそしてロマンティックであると言えます。そして指先にまとわりつくような発音とその跳ねるような音、タッチと一体になったかのような表情の変化、その深さなどもトーレスの機能的な特徴であり、ここではそれらがすべて円満に備わっています。加えて本器ではメイプルならではのさらっとした感触の音像と栗山氏ならではの明朗さとの相性も良く、音色の面でも非常に魅力的な一本に仕上がっています。
全体はセラックニスによる少し飴色がかった味わい深い仕上げで、楽器にふさわしい気品を与えています。ネックは普通の厚みのDシェイプ、弦高値は3.0/4.2mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.5~2.0mmあります。糸巻はGotoh製のカスタムモデルを装着。重量は1.40㎏。