
ヘルムート・ブッフシュタイナー 1988年製が入荷しました。
〔楽器情報〕
ヘルムート・ブッフシュタイナー 1988年製 モデル‘Meister‘ No.001 Usedの入荷です。このブランドで日本でもよく知られたB10 や 楕円形のサウンドホールが特徴的なワイスガーバーモデル等の通常ラインナップと別に限定的に出荷されたシリーズの第一作(No.001)となります。「マイスター」のモデル名が冠されていることからも(オリジナルラベルに加えてモデル名と製作番号を記したもう一枚のラベルが貼られています)、特にハイスペックなラインとして製作されたことがうかがえますが、木材の良質さや複雑な設計、全体的な仕上げなども彼らしい職人的精緻さと厳しさが行き渡っており、いつもながら納得させられる仕上がりとなっています。
表面板力木構造は非常に個性的なもので、サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバー、そして下側は2本のハーモニックバーがやや高音側に寄った位置でX状に交差しており、しかもそれぞれのバーは片方が細く高い切妻型でもう片方が低く幅のある山型で加工されています。さらにこの2本が交差する箇所は切妻型のバーに開口部が設けられ、山型のバーがそこをくぐり抜ける方式で、お互いの長さも異なります(つまり2本のバーそれぞれの始点と終点の位置もまた左右非対称になっているので、正面から見たときにこのXは大きく傾いた形になっています)。ボディ下部は5本の扇状力木がちょうど表面板のセンターに設置された一本を境にして高音側に3本、低音側に1本、それぞれの間隔も角度も不均等に配置されています。ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ面積に厚さ2mmほどの補強プレートが貼られています。表面板と横板との接合部分にはこれも特徴的な形状のペオネス(木製の小型ブロック状のものを並べてゆくようにして設置する)を3mmほどの間隔を空けて設置していますが、ボトム部分のみ接ぎのないライニングを設置しています。レゾナンスはG#の少し上に設定されています。
この独特のアシンメトリな力木配置はジャズギターやアコースティックギターの製作でもその腕を振るった彼だけに、クロスジャンルな試みとして発想されたものであることが推測できるのですが、彼自身この設計を一つの結論として認識していたのか、この後2000年代に至るまで、彼のメインモデルであるB10などで採用しています。
ドイツ的、というよりブッフシュタイナー的としか言いようのない独特な音響設計で、表面板からすべての音が等しく立ち上がってくるような平面性、同一位相感があり、その整然とした感覚はクラシック的なものとも親和性があります。音色もストイックなまでに磨かれているのですが、意外なほどによく歌い、このある種の冷たさとロマンティックさの同居がドイツ的とも言えます。発音の瞬間から無駄な奥行きを排した整った音が現れ、サスティーンもその充実さを保ちながら終止へと続きます。
新品同様と言えるほどの超美品で、視認できる傷はありません。割れや改造などの修理履歴もなく、ネックやフレットなどの演奏性に関わる部分も良好です。糸巻はドイツの高級ブランドでヘルマン・ハウザーに標準装着されていたことでも有名なライシェル製の珍しいキドニーボタン仕様を装着しており、こちらも機能的な問題はありません。ネックは普通の厚みのDシェイプで、ヘッドとのジョイント部分はハウザーギター等でも見られるVジョイント方式、弦高値は3.8/4.5mm(1弦/6弦 12フレット)と高めの設定になっています。サドル余剰は1.0~2.0mmあります。Meinel 製のオリジナルハードケースが付属しておりこちらもとてもきれいな状態です。