
コンデ・エルマノス(フェリーペ工房) 1990年製 が入荷しました。
[楽器情報]
コンデ・エルマノス フェリーペ工房、クラシックモデルの珍しい一本 1990年製Usedの入荷です。もちろんコンデブランドはあくまでフラメンコをそのラインナップのメインとしながら、それと並行してクラシックラインも継続しており、その意味では決して珍しいとは言えないのですが、本作はその仕様と構造の点において、このブランドとしてはやや異色ともいえるモデルとなっています。
外観的にはこのブランドのハイスペックモデルの符牒となっている有名なmedia lunaヘッド(俗に闘牛ヘッドとも言われる角を模したような独特のデザイン)となっており、そのアイデンティティを揺るぎなく提示しています。仕様としてはこれはクラシックに合わせて弦長を648mmとしており、表面板は杉材、ボディはかなり厚め(ネック部分で9.7㎝、ボトム部分で10.7cm)で作られています。そして内部構造(表面板の力木配置)ですが、サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバー、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーとその中央で交差するもう一本の斜めのバー(低音側横板上部から高音側横板下部に向かって斜め下がってゆくように設置され、交差部分はお互いに強固に組み込まれている)、扇状力木は計6本がセンターに配された1本を境に高音側に2本、低音側に3本、ほとんど角度をつけずに互いに平行に近い角度で配置されており、ボトム部にはこれらの下端を受け止めるように逆ハの字型に配置された2本のクロージングバー、そして駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い1mmほどの補強板が貼られているという全体の配置。
この力木配置(力木それぞれの形状やサイズなども含め)はあまりにも有名なホセ・ラミレス3世の「1A」 モデルとほぼ同一となっており、杉材を使用した表面板や厚いボディサイズなど、ラミレスがその移行期である1986年頃に製作したものとほぼ完全な相同性がみられます。レゾナンスはG~G#の間に設定されています(これに関してはラミレスはほぼAに設定されています)。
しかし上記のようなラミレスとの同一性が外形において認められながらも、コンデはここでいかにもこのブランドらしい(つまりややフラメンコ的な)手の直ぐ近くで音が立ち上がってくるような分離の良い乾いた音を作り出します。全体のバランスは太い低音から引き締まった高音へと至るスペインギターの典型がしっかりと構築されており、この点もラミレスとは異なり良い意味でオーソドックスな響き。このブランドが得意とするフラメンコ的な発音機能とクラシック的な情感とが他のギターでは聴かれないような独特の按配でマッチングしており、結果抑制された渋めの表情の中にダイナミックなうねりを見せる、個性的なクラシックモデルに仕上がっています。
コンデ・エルマノスのフェリーペ工房は2000年代まで同様の設計でクラシックモデルの製作を継続します。
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