エルナンデス・イ・アグアド 1968 年製 が入荷しました。

[楽器情報]
エルナンデス・イ・アグアド 1968年製 No.363 の入荷です。ブランドとしては珍しく、表面板に杉材を使用したモデル。表面板力木配置はアグアド後期の典型的なもので、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各一本のハーモニックバー、そして下側の方のバーのほぼ中央部分(つまりサウンドホールの真下の位置)から高音側横板との接合部に向かって斜めに下がってゆくように配置されたもう一本のいわゆるトレブルバー、扇状力木は6本がセンターに配された1本を境として低音側に3本、高音側に2本を配置、ボトム部でこれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置には薄い補強板が丁度駒板の幅と合致するように(同時に一番低音側の一本を除く5本の扇状力木の範囲に丁度収まるように設置されているという全体の設計。レゾナンスはGの少し上に設定されています。

アグアドの発音の特徴として、撥弦時の適度な粘りと反発感を伴いながら、実に適切な質量を持った音像の跳躍するような発音とひとまずいうことができますが、本作ではこの粘りと反発感が薄れ、ストレスのない発音になっています。しかしながらいたずらに放射してゆくようなプロジェクションではなく、音としての上品で確かな佇まいがあり、色彩は控えめながらも表情の機微と多様さはやはり人間の声にも比すべきもので、非常に音楽的。基音の硬質さとほんのりとエコーをまとったような響きに杉材の特徴が現れており、また特に高音の純度の高い樹脂のような音像は魅力的。全体に各音の分離も優れ、低音から中低音そして高音に至るバランスも秀逸です。