皆様いかがお過ごしですか? 中谷貞夫氏率いる岡山新堀ギターオーケストラは、2005年、2008年に次いで今回で3回目となるスペインツアーを7月の最後の週に行いました。一週間の滞在中、まずバルセローナで観光をし、その後スペイン各地で3回のコンサートを持ちました。私はこのツアーの計画者でもあり、マネージャー兼通訳として全行程に同行しました。今回のスペイン便りは、その様子を写真も交えて、日記のように日を追って綴ってみようと思います。今回はそのツアーの前半をお届けいたします。
岡山新堀ギターオーケストラ・スペインツアー2011 ・前半〈7月23日~26日〉
7月23日(土) :総勢35名(団員29人、、付添6人)のグループは、大きな荷物を携えて夕方バルセローナ・プラッツ空港に到着した。バスに全ての荷物をどうにか詰め込み、そのまま市内のホテルに直行しチェックイン。各自部屋に荷物を置いた後、ホテルのレストランで夕食。久しぶりに会う人、初対面の人、皆さんと挨拶を交わして、今晩はおとなしく就寝。はるばる関空からアムステルダム経由の長い空の旅、お疲れ様でした。
(荷物の積み下ろしは本当に大変!)
24日(日) :バルセローナ半日市内観光。日本語堪能な現地ガイド、フェリーペさんが朝ホテルに我々を迎えにきた。ゴシック地区と呼ばれる旧市街を案内してもらう。先ずモダニズムの建物カタルーニャ音楽堂を見学。独特なファサードとホール内の美しい装飾に心を奪われる。
(カタルーニャ音楽堂内部装飾)
迷路のような細い路地を通ってピカソ美術館へ。幼少そして若い頃の作品が多く展示されているので、作風の移り変わりを見ることができて大変興味深い。子供の頃から既に類稀なデッサン力を持っていたのがよくわかる。
バスでモンジュイックの丘に登る。ここからの景色は素晴らしい。バルセローナ港や市内が一望できる。地中海の美しい青が目にしみた。オリンピック・スタヂアム、ミロ美術館、スペイン村などを窓越しに眺めながら市内に下りてきた。ここで一旦解散。
(バルセローナ港)
昼食を含め自由行動の後、夕方ホテルの会議室を借りてリハーサルを始める。旅の疲れや時差ボケを感じさせないダイナミックな演奏。そしてよくまとまっている。日本で長い時間をかけてじっくり準備してきたのがうかがわれる。リハーサル後再び外出。スペイン広場近くにある大きな噴水で行われる、「魔法の噴水」と呼ばれる噴水と音楽と光のショーを見に行った。音楽に合わせ、色とりどりの光に照らされた水が、様々な形で空高く噴き上げられる様子に皆歓声を上げていた。
(美しい魔法の噴水)
25日(月) :天才建築家ガウディの世界にスポットを当てた半日市内観光。 昨日と同じガイド、フェリーペさんの案内で グエル公園とお目当てのサグラダファミリアを訪ねる。グエル公園内の広場をぐるりと囲んでいる「波打つベンチ」。ガウディ特有のモザイクが散りばめられた石造りのベンチは曲線が美しく、座ってみると思いの外座り心地が良い。
(波打つベンチ)
公園自体高台にあるので、ここからバルセローナ市街と地中海が見下ろせる。そしてこの長く曲がりくねったベンチはバルコニーの様になっていて、その下はたくさんの柱で支えられている。その天井も乳白色のタイル張りで、美しいモザイクで装飾されている。石段を少し下に降りていくと、名物のトカゲの像が石段にへばりつくようにある。やはりこのトカゲもモザイクでできている。その口からは水が流れていて噴水の役目をしている。グエル公園の顔とも言えるこのトカゲは大人気で、誰もが写真を撮ろうとものすごい人だかりだった。
(人気者トカゲの前で、ハイ、チーズ!)
しかしこの後行ったサグラダファミリアの周りにはもっとすごい数の人がいた。個人入場者用のチケット売り場の長い列だ。我々はフェリーペさんが予約してくれてあった団体用チケットがあったので、その大勢の人たちを横目に団体専用入り口へ向かう。予約時間までまだ少しあったので、道を挟んだ向こう側の公園にいく。上の写真の様に池の向こうに雄大なサグラダファミリアの全景を望める。ここは絶好の撮影場所だ。皆大騒ぎをしながら撮りまくっていた。礼拝堂の中に入ると、その高い天井に驚かされる。この礼拝堂はつい最近完成されたばかりだ。私が8年ほど前に訪れた時は、まだ建設現場そのものだった事を考えると、相当工事がハイピッチで進んでいるのがよくわかる。一番困難なのは、真ん中に最も高い塔が建つことになっている事だそうで、これが完成するまではまだまだ時間がかかりそうだ。サグラダファミリアの近くにあるレストランでの昼食後は、自由時間。それぞれショッピングや市内散策を楽しんだ。夕方から前日同様、ホテルでリハーサル。ガウディに刺激を受けたのか、スペインの気風に慣れてきたのか、とてものびのびとした演奏だ。リハーサル後は再び自由行動。思い思いのバルセローナの夜を楽しんだ。ホテルのすぐ近くにあるグラシア大通りには、ガウディが設計した建物がいくつか残っている。夜ライトアップされた作品は神秘さが増して見える。
(ガウディ作バトリョー邸)
26日(火) :移動日。カンタブリア地方に向けて早朝出発、約700Kmの行程だ。まずは西方に向かい、サラゴサの近辺でコーヒー・ブレイク。その後は進路を北に取り、途中リオハ地方に立ち寄る。リオハ・ワインで知られるワインの名産地だ。高速道路を外れると一面葡萄畑が広がっている。多くのボデーガ(ワイナリー)がある。この辺はワイン製造をなりわいとしている街が多い。ラグアールディアにある、エレダッド・ウガルテという大きなボデーガを見学した。洞窟を切り開いた文字通りのワインカーブ、そしてワイン製造の工程を美人のオルガさんの案内で見ていく。きれいに積み上げられ何列にも並べられているものすごい数のオーク材の樽。このボデーガでは、年間150万本ほどのワインが出荷されているそうだ。見学の後は試飲会となり、3つの異なるワインを試す。色を見て、匂いを嗅ぎ、そして味見というワイン鑑定の基本的なプロセスを教わり皆試してみる。試飲しながらピンチョ類をつまむ。今日はここで昼食も兼ねている。美味しいワインでほろ酔い加減になり皆上機嫌。
さあ目指すカンタブリア地方までもう少しだ。ところが、バスク地方の主要都市ビルバオのすぐ近くまで来て、バスは突然スローダウン。高速道路脇の休憩用エリアでストップ。故障だ。運転手のマルコスが必死で修理を試みるがうまくいかず、ロードサービスに電話するが、なかなか来てくれない。今日は夕方のリハーサル以外特に予定がないせいか、皆文句も言わずのんびり待ってくれた。結局、修理が済んでまた動き出すまで、ここで2時間以上足止めとなった。思わぬハプニングだったが、今日は演奏会とか、飛行機出発などの大切な予定が無くて本当に良かった。目的地のスアンセスに着く頃には、午後9時近くになっていた。リハーサルは諦めそのまま夕食をとりにいくことにした。海岸沿いにあるラ・ダルセナというレストランは、私が以前食事した時大変気に入っていたので、ぜひここで皆さんに食事をしてほしいと思っていた。今晩は豪華なフルコース・ディナーだ。前菜のハモン・イベリコと自家製フォアグラのテリーヌに続いて、エビの鉄板焼きとアサリ入りのミニ・スープ。メインの魚はあんこう、締めくくりの肉はフィレ・ステーキ。そして自家製デザート。それぞれの料理にマッチしたワインを3種類用意してくれた。カンタブリア海で獲れた新鮮な海産物、それに勝るとも劣らない美味で柔らかいカンタブリア牛、美味しいワイン(もちろん、リオハ!)、皆さん満喫してくれた様だ。食事が終わり、すでに夜の12時を回っていた。すっかり満腹になり、さすがにどの顔にも疲れと眠さが現れている。心地よい潮風に当たりながらホテルまで歩いて帰った。こうして長い一日が終わった。明日からはいよいよ三日連続でコンサートだ。今夜はぐっすり眠ろう!
今回のスペイン便りはここまで、次回はツアーの後半、三回の演奏会の様子などを中心にお伝えします。
それでは、またお目にかかりましょう。ごきげんよう!
2011年8月14日、マドリード、高木真介
Masayuki Takagi