2014年3月16日、アウラ第1試奏室にてレクチャーイベント「ギター製作 その見えない世界を聴く」が開催されました。 セラック塗装の実践や谷川英勢氏の歓迎演奏など、盛りだくさんのプログラムで限定25席のチケットは早々に売り切れとなりました。 ご来場頂きましたお客様にはこの場を借りて御礼申し上げます。イベントは14時30分からの開演でしたが、A・ネジメ・オーノギターのメンテナンスをご本人に見てもらうチャンスとあって、 ネジメギター所有のお客様が13時頃からお見えになられ、店内は早々に熱気に溢れていました。

イベントは3部構成で、まずは14時30分より谷川英勢氏による歓迎演奏での幕開け。 使用ギターは「A・ネジメ・オーノ 100号 2013年」。1曲目はささやく様なイントロから始まる武満徹編曲の「オーバー・ザ・レインボー」。メインメロディーが始まると聴き慣れた心地よいメロディーが室内を包みこみます。この時点でA・ネジメ・オーノギターの1弦から6弦までのバランスの良さ、音量・音質の奥深さを感じる事が出来ました。2曲目はヴィラ=ロボスの「5つのプレリュード」から3曲。この曲は低音部のメロディーが随所に出てくる曲ですが、ネジメギターはまったく曇る事なくそのメロディーをひと際鮮やかに聴かせてくれました。 3曲目にアサドの「思い出」でしっとりと聴かせ、ラストの4曲目にはA・マリンを師とするネジメ氏のためにスペインの作曲家、J・トゥリーナの「ソナタ」第2、第3楽章を演奏。この曲はラスゲアードを含むこの日の中では最も激しい演奏。 ネジメギターの音量の豊かさ、しかし決して濁る事のない明確な音の艶を肌で感じる事が出来る素晴らしい演奏でした。 演奏終了後はネジメギターの魅力を余すところなく引き出した谷川氏に惜しみない拍手が送られました。

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休憩をはさんでの第2部はいよいよネジメ・オーノ氏の登場です。進行役には日曜日にアウラの修理を担当していただいてる田邊雅啓氏、さらにネジメ氏のご子息のネジメ・マリン氏と1部で歓迎演奏をしていただいた谷川英勢氏を迎えてのトークショー。まずはネジメ氏がスペインはグラナダでA・マリンの弟子になるまでのお話し。当時は海外に移住するのも簡単ではなかった時代。 マリン氏の住居を探していた所、セドロの匂いで辿り着いたとの話しはやはり生まれついてのギター製作家ならではと感じました。 言葉の壁もありその苦労は並大抵のものではなかっただろうと想像できますが、そんな事は微塵も感じさせないネジメ氏の話しは笑いを交えて進んでいきました。 しかしながら苦労も含めたすべての経験が今のネジメギターに反映されているのでしょう。 谷川氏も「音量が大きいイメージがありましたが、決してそれだけではなく小さい音でも遠くまで届いてくれるので繊細なフレーズも気持ち良く演奏出来ました」と評価されていました。 後半は「チェコスロバキア・クツナホラ国際ギター製作コンクール」で優勝した時の話エピソードを聴き、ご持参いただいたゴールドメダルはご来場の皆様、興味深々で眺めていました。 最後に質問コーナーに移りましたが、ご自分で製作をされているお客様から専門的な質問も飛び交い、ネジメ氏も田邊氏もタジタジのシーンも見受けられました(笑) 今回ネジメ氏の話を伺うことで、改めて日本のギター製作に対するネジメ氏の貢献を再認識することが出来ました。 セラック塗装はもちろん、スペインの伝統工法を礎とした製作の「意識の高さ」「技術の高さ」に驚きを隠せません。 終始和やかな会の雰囲気もネジメ氏の人柄の表す通りでした。

第3部はネジメ・マリン氏によるセラック塗装の実践です。 やはりこれが目当てのお客様が多かったようで第3部に入ると後ろのお客様も立ち上がり、 皆さん鋭い視線でマリン氏の手元を凝視しています。マリン氏の手順解説、ネジメ氏・田邊氏によるセラックニスの解説でイベントは進んで行きました。 中でもセラックニスの種類、色、また購入方法などの質問は多数出ていました。 実際にプロの製作家が施すセラックニスの塗布は思った以上にハードな作業で、マリン氏も解説を交えながら一度も手を止める事なくセラックを塗り続けていました。今回のイベントではある程度塗装が終わっているギターの最終仕上げを実践しましたが、 実際には生木の状態から何度も塗装を重ねるのかと思うと、クラシックギターの音の深さにも頷けます。 イベントは17時で一度閉会となりましたが、その後希望のお客様にセラックニス塗装の実践が行われました。 6割方のお客様が残り数名の方がセラック塗装をマリン氏の指導で実践されました。 ここでも質問が飛び交いながら皆さん真剣な眼差しでご参加頂きました。 14時半から始まったこのイベント、終了は17時半と3時間にわたる長時間となりましたが、 ご来場頂きましたお客様は一様にご満足の表情でした。 企画しました我々としましてもお客様にお喜び頂き、誠に嬉しく思います。