
イグナシオ・フレタ1世 1959年製 No.157 が入荷しました。
[楽器情報]
イグナシオ・フレタ1世 1959年製 No.157 の入荷です。1957年にセゴビアのためのギターを製作してからわずか2年後の作で、この伝説的な文脈で語らずとも、この時期のフレタ1世のギターはその異様な迫力で完全に他のブランドを圧倒する個性にあふれています。セゴビアの激賞を受けながらもフレタは1960年代に入るまで力木やバーの本数や形状、表面板の厚みの設定など1作ごとに異なる試みをしており、そのためこの時期のブランドの音響的な特性を定義するのは非常に難しいものがあります。だれもがその特徴として口にするであろうその豊かな音量と極めてロマンティックな表現力についてさえ、その性質において一本一本が異なるものがあり、まさに生き物のような実在性を感じさせるところなどほとんど芸術的といえるほど。
本作No.157もまた、その非常な音圧の高さとオーディトリアムな音の拡がり、濃密なロマンティシズムを湛えた表情が素晴らしい一本となっています。強い粘りを持つ引き締まった発音が特徴的で、いかにも剛健でありながら、一つ一つの音には濃密な歌のポテンシャルが内包されており、これがフレタ特有の深い奥行きをともなって現出してくる様はやはり比類がありません。また特に低音の、響箱がぶるぶると地響きのように震える響きはまるで弦楽器のようで、クラシックギターの音響体験として稀有と言えます。こうした種々の強いアイデンティティがギター的なバランスの中で対比され融合してゆく、その生々しく、それゆえにこそクラシカルな表現力はやはり圧倒的な個性があります。
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全体はセラック塗装、おそらくは塗り替え等はなくオリジナルの状態を保持していると思われます。表面板はこの時期のフレタにしばしば見られる現象ですが、ブリッジのサウンドホール側とボトム側とでやや歪みがあり、割れの修理履歴がいくつかございます。指板脇高音側に2箇所、駒板の高音側脇に20センチほどの長い割れ、駒板下低音側からボトムにかけて1か所それぞれ補修歴がありますがいずれも現状で継続使用への影響はありません。横裏板は経年相応の傷や擦れなどありますが外観を損ねるほどではなく、また割れもありません。ネック裏も経年相応の傷がありますが爪による過度の摩耗や通すの剥がれ等には至っておらず、演奏時の感触としては問題のないレベルです。演奏性に関する部分も問題なく、ネックは真っすぐを維持しており、フレットも適正値で特に目立った摩耗はありません。ネック形状はこの時期のフレタ1世の特徴的なほとんどCラウンドに近いDシェイプで、あまりコンパクトすぎずしっかりとしたグリップ感があります。弦高値は3.3/4.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルに1.0~1.5mmの余剰があります。弦長660mmで弦高値もやや高めの設定ですが弦の張りはさほどに強くなく中庸といえるほどなので、さほどに演奏時のストレスは感じません。糸巻は製作時のままのフステーロ製を装着、機能的な問題はありません。重量は1.65㎏。