
クリストファー・ディーン 1990年製 が入荷しました。
[楽器情報]
クリストファー・ディーン製作オリジナルモデル 1990年製 No.122 Usedです。1980年代後半に入ってから自らの工房を立ち上げた彼にとって本作はいわばキャリア初期のモデルであり、その仕上がりには多分にフィッシャー的なものを感じさせながらも、すでに彼の後年の特質となるある意味学際的と言えるほどに多様性を内包しつつさりげなく伝統的な身振りのなかに自己をおいてみせる、その独特のスタンスの萌芽が見て取れます。師であるフィッシャーがアカデミックなアプローチにやや偏向し過ぎた感のある展開をちょうど同時期に見せ始めるのに対し、ディーンは自らの出自と語るルビオとフィッシャー、そしてセゴビアの音色を基礎としながら、まさに横断的に数々の先達の作のエッセンスを吸収し、持ち前のバランス感覚で見事にそれらの音響を新たな洗練へと昇華させていきます。
いかにもスパニッシュギター的な構造を採用しながらここでディーンは敢えて低音の重心を下げ過ぎず、響きも太くし過ぎず、自然に高音の力強さが際立つような音響設計で全体を実にバランスよくまとめあげており、敢えて言えばホセ・ラミレス的マドリッド派との近似性はあるものの(レゾナンスの設定も含め)、これらのギターにおける高音の歌の強い前景化と比して、ここでのディーンはいかにも洗練されています。その高音の樹脂のような濃密な透明感とそれを適切に支える低音とのバランスが作り出す音響はとても魅力的。一つ一つの音像そのものはクリアで、自然な奥行きを伴って響きます。その表情も十分に豊かながら甘さを回避し、やや安直に言えばイギリス人らしいジェントルなニュアンスで統一されているので、バロックからロマンティックな楽曲までが自然にクラシカルな相貌におさまってゆきます。
現在彼はほぼすべてのギターをセラック塗装仕様にしていますが本作では厚みのあるラッカー塗装。湿度変化によると思われるウェザーチェックが表面板全体に見られますが、現状で継続使用には問題ございません。割れや改造等の大きな修理履歴はなく、また弾きキズなどのも指板脇やサウンドホールの周りなどにわずかにあるのみで、横裏板は衣服等による軽微な摩擦あと、ネック裏も細かなキズだけの状態となっています。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットは1~5フレットでわずかに摩耗ありますが演奏性には影響ありません。ネック形状はやや薄めのDシェイプでフラットな握り心地。弦高値は2.7/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0mmあります。指板は高音側20フレット仕様となっています。糸巻はスローン製を装着しておりこちらも現状で機能性に問題ありません。重量は1.76㎏。
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