ギター製作にはいろいろな道具が使われますが、日本と海外では異なる使い方をする場合もあり、なかなか興味深いものがあります。
小刀
1.の中段の柄がないのは切り出し小刀で、上の木型を作って特注しました。ネックとヘッド接合部及びヒール部を両サイド同じように削るために日本刀のように両刃にしてあります(次の画像、刃の側から見ています)。一番下が刳り(くり)小刀です。こちらは一般的な既製品です。
2.ネックやヒールを削るのに、海外では長く大きい金属の半丸ヤスリや、平ヤスリで荒削りするようです。多少はヤスリも使いますが、私は八割方、刳り小刀と豆鉋で成形します。仕上げは空研ぎサンドペーパーです。スクレーパーも使います。
際鉋 パフリング・バインディングカッター
3.は鉋、際鉋です。
古い方は蚤の市でガラクタの中から見つけたもの、新しい方は、際鉋用に鉋刃を注文して仕立ててもらったものです。使用場所は、ヘッドの横裏、ネック、ヒールギター内部、エンドブロック、そしてパフリング、バインディング掃いに、たまに力木と、個人的には多用しています。一枚鉋といって、裏金というものが無いタイプなのでよく研げますと、サクサク削れます。
4.5.はパフリング・バインディングカッターです。
パフリング・バインディングカッターは、冶具にトリマーという機械をセットして加工します。
機械の入らないネックのところは、罫引きに、ノミやのこぎり、少々ヤスリやカッターなども総動員して加工します。
この冶具では機械を固定して、ギターの方を動かして削ります。しかし、製作家全体ではトリマーを直接持って、加工する人のが多いようです。
この冶具のポイントは黒檀のパフリング記憶装置です。これがあると何度もノギスでパフリングの削り具合を確認しなくても削ることが出来るほか、複数の幅の違うパフリング・バインディングを削ることが出来ます。
小鉋 豆鉋
小鉋または豆鉋です。どちらにも呼ばれますし、サイズによる呼称の区分けも厳密にはありませんが、豆鉋は指先で隠れるぐらい小さいものを指すことが多いようです。
写真のものは「豆」と呼ぶには空豆よりもずっと大きく、それぞれ50ミリ強の大きさです。比較のために、真ん中にギターのナットを置いてみました。ちょうどネック幅くらいと思っていただければわかりやすいでしょう。
両方とも主に力木を成形するために、鉋刃を手に 入れ、鉋台を自作しました。ポイントは鉋の横の部分、小端を刃口のところまで削り込んで、左右どちらからでも削れる、際(きわ)鉋に近い形にしてあります。そうすることで、接着された力木の隅まで削ることができます。一般的にセメ鉋と呼ばれます。
左側の鉋刃は、小鉋の名工、丸山銀次さんの作品です。鉋身の黒い部分にメロンのようなシワ模様があるのが特徴です。右側は銘はありませんが、刃物専門店で購入しました。今では入手しにくい良い鉋刃です。現在ネック削りの方で活躍しています。
鉋の大きさ・形は、用途に応じて多種多様です。小さい用材を削るのに大きな鉋は機動性に欠け、使いにくいですし、逆に大きな用材に小さな鉋は不合理です。したがって用材の大小に合わせて、鉋も大きさが多様になります。小さな部位の加工一つに対して一つの鉋が必要なくらいです。このため、安くて質の良い小さい鉋刃が求められることになります。