マドリッドで生まれ育った彼は13歳でまず家具職人の徒弟となるが、彼の住んでいた下町、ソンブレレリア通り周辺には多くのギタリストや製作家たちが住み、その影響もあって幼少よりギターの音色に魅せられていた。やがて仕事の関係で1956年にイギリスに移住した後、スペインへの郷愁にかられた彼は自宅の台所で1冊の製作入門書を頼りにギター作りを開始。そうして暗中模索を繰り返しながらも完成した楽器が徐々に売れるようになってきた頃の1970年、顧客の一人から名手ジュリアン・ブリームを紹介されることになる。ブリームは即座にその才能を見抜き、セムレーの自宅敷地内にある、以前製作家のデヴィッド・ルビオが使用していた工房を彼に提供までしている。この名手からのアドバイスの下、1973年にはブリームがその後コンサートと録音に長く使用することになる有名なギターを完成させている。
1995年にはスペインのグアダラハラ県のシグエンサの小村に移住。以前各地で開催していたフェスティバルの一環としての製作講習会に物足りず、長期間泊まり込みで指導するマスタークラスを数回にわたってシグエンサで主宰して、多くの若き才能が集う場とした他、同地のギター博物館へ自身の貴重な楽器コレクションを寄贈し、その開設のため尽力している。
そしてその情熱に衰えはなく、製作のみならずその歴史についての研究にも余念のない彼は、妻と共同でトーレスの生涯と楽器についての書を刊行し、更にビウエラについてや、スペインの歴代製作家についての辞書の編纂等の執筆活動に今も力を入れている。