アウラのホームページのビジターの皆様、お元気でお過ごしでしょうか?
私はアウラ音楽院 池袋校ギター科講師の 榎本裕之と申します。
昨秋11月中旬、「アンドレス・セゴビア国際ギターフェスティバル」からの招聘演奏を中心に、私にとって4回目となるスペイン公演に行ってまいりました。
また、今回、演奏とは別に、権威ある「アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール審査員」も務めさせて頂き、大変に名誉な事でした。 (そのご報告はまた別の機会に譲ります。)
♪リナレス市:ムセオ・セゴビアの控え室にて
♪:ピアニスト:村上江里佳さん
スペインは何と言っても「ギターのふるさと」です。その音楽の独特のサウンドやリズムも、スペインの風土や文化が産み出したもので、「光と影」、「西洋と東洋」とが交錯するユニークな魅力に溢れています。
日本という、全く違う風土と文化の中でギターをマスターしてきた私の音楽が、この国の人々にどう受入れられるのか? まして、このフェスティバルはギターの大巨匠セゴビアの生誕地リナレス市で行われます。
それは私にとり、かけがえのない体験であり、一人のギタリストの挑戦のレポートとしてお読みいただけたら幸いです。
今回、私のギターはいつもの相棒、名器ホセ・ラミレスⅢ世エリート、そして共演者に、優れたピアニストの村上江里佳さんを迎え、私のソロとピアノとのデュオを織り交ぜた構成です。
その音楽の旅は、まず11月16日、
最もスペインらしい趣の美しい古都トレドから始まりました
おや?と思う程小さい小径を螺旋状にくだって行くと、ふいに広場が開け、由緒あるトレド音楽院の建物が現れ、入り口に我々のポスターが! その音楽院ホールが今宵の演奏場所です。
♪トレド音楽院ホールでのソロ演奏。
トレド音楽院ホールのコンサートを暖かい反応で終え、18日、本命のセゴビア国際ギターフェスティバルの招聘コンサートの日を迎えました。 期間中10日間に渡り世界の名手達が競演する6日目の公演です。 (会場のムセオ・セゴビアのあるリナレス市は巨匠セゴビアの生誕地であり、ホールの真下には巨匠が眠っています)
♪ ムセオ・セゴビアのプログラム
♪ ムセオ・セゴビア・ホールでの演奏風景 満員の聴衆でした。
ムセオ・セゴビア・ホール ひとつの奇跡
最後のボッケリーニの「序奏とファンダンゴ」を弾き終えると,大きな拍手と熱いスペイン流かけ声が飛び交う。
答礼にソロでプジョールの「ロマンサ」を弾くと、曲尾の長い余韻の向うから、押し返してくる波のような拍手。 再びDUO でレクオーナーの「マラゲーニャ」。熱気に支えられ私も村上さんも渾身の情熱で弾き終えると。。。
歓声の内に、ひとり、ふたり、と立ち上がり始め、見る間に総立ちのスタンディングオベーションの光景が目の前に!!。。。。
思わず胸が熱くなり、『今、見ている光景は本当だろうか? ギターの故国スペインで、ましてセゴビアの生誕地の聴衆が、日本人の自分が奏でた音楽に、ほとんど熱狂している!』、
『ああ、俺はこんな瞬間の為に今まで生きてきたのだな、、、』、
『こんな演奏家冥利に尽きる事はない』、、、と。
多分、そんな私はまだまだ小さいのでしょう。 けれども、今は、その瞬間の喜びを、できればギターを、音楽を愛している故国の人達に共感して頂ければ幸いです。 同時に初めての訪西にして、我が儘な私の要求に応え、ピアノで共演下さった村上江里佳さんの技量の高さと深い研究心も特筆せねばなりません。
♪スペインの新聞が我々の演奏写真を掲載
ビリチェス劇場にて
翌19日は村上さんはウベダ音楽院のホールで初のピアノ・ソロリサイタルを好評に終え、私はビリチェスの劇場で(前半は、ギター合奏団カンパニージャの選抜女性メンバーによる二重奏とトリオで美しい演奏)後半に私のソロコンサートを行い、「椿姫のファンタジア」で本プロを終え、「グラン・ホタ」をアンコールで弾き、2度目の奇跡ーースタンディングオベーションを頂きました。
実は、この日、指の調子が思わしく無かったのです。 それを忘れる様に務め、なんとも言えぬ温かで大らかなスペインの聴衆と今この瞬間を楽しみたい、音楽することに集中したい!とだけ念じるようにしたら、「いつのまにか弾かせて頂けた」、そうとしか言えない貴重な体験でした。
あんな喜びの感情のうちにグランホタを弾けた事は今まで無かったのでした。
♪ムセオ・セゴビア終演後、
祝福に駆けつけて下さったギタリストのフランシスコ・クエンカ氏 (右:現セゴビア音楽院院長クエンカ氏)
今回、様々な形で応援,声援,ご支援下さった皆様に改めて深く御礼申します。
尚、この演奏の旅には終始、グラナダ音楽院の優秀なギター留学生,渡辺 茜さんが同行し、通訳他様々なフォローをして下さり、大いに力になったことを付記します。