スモールマンに代表される現代的な作風が多いオーストラリアの製作家の中で、ハンコックの作品は異色の、スペインの伝統を継承した作風となっています。詳しくは写真下部の紹介記事をご覧下さい。

オーストラリアは、もともとギター製作の歴史を持たない国ですが、現在はジョン・ウィリアムスが使用していることで有名なスモールマンをはじめ、多数のギター製作家をかかえる国として国際的に知られています。その多くは、斬新なアイデアを取り入れ、音量豊かなコンサートギターを念頭に製作されています。  今回ご紹介するハンコックは、そうしたオーストラリアの製作家としては異色の存在で、スペインの伝統的な音色にこだわった作品を生み出しています。ハウザーのクラシカルなひびきに触発されたハンコックのギターは、何も説明されずに試奏したら、オーストラリア製と思う方はたぶんいないでしょう。材料や精度、仕上がりも第一級ですが、現在は低価格に設定されており、アウラが自信をもっておすすめできる作品となっています。  

<経歴>

 オーストラリア、クイーンズランドで生まれ育ったショーン・ハンコックは、製作家として有名な父キムと兄デーンのもとで、11歳の時にギター製作を開始しました。洗練された木工技術は幾世代かに渡ってハンコック家に受け継がれており、ショーンの曽祖父はイギリスで名声を得た木工職人でした。  「家族で一緒にいるときはギター、ギター製作、素材、音楽、演奏家の話をたくさんします。家族が共通の興味や情熱を持っているからなのです。」  1997年にショーンは「ネスカフェ・ビッグ・ブレイク」を獲得した最も若いオーストラリア人となりました。2万ドルの賞金と共にナショナル・テレビジョンの「トゥデイ」という番組に父、兄と共に出演し、それ以来ショーンと彼のギターはケーブルテレビ、新聞、雑誌等で特集されるようになっていきました。  ショーンはデザイン学の学位を取得しており、昨年クイーンズランド美術館で開催された「クイーンズランド・デザインコンテスト」において、そのデザインの素晴らしさによりファイナリストとして展示されました。  「私はたくさんの製作家の作品に影響を受けています。若いときは父が1968年、69年製ラミレスや1967年製レジェスを含むギターを所有していました。それらはとても魅力的な音で鳴る‘スパニッシュ・クラシカル’でした。 GSIに行った時、1966年製ハウザー2世を含む何台かの、現在流通している中で最も素晴らしいギターを目にしました。とりわけハウザー2世にはとても感銘を受けました。ハウザー2世は1世がかつてそうであったほどパワフルではありませんが、透明で甘い、そして何よりもバランスの取れた音を持っており、非常に惹かれました。ハウザーの外観も気に入っています。美しく均整の取れた設計は、角ばりすぎたり丸っこくなりすぎたりせず、上品で幾何学的な美しさにあふれています。私がギター製作で目指しているのは、ハウザーのような音の広がりを持ち、バランスが取れていて、弾き心地が良い、完璧な出来栄えのギターです。」