本山「ラミレスⅢ世の全塗装の依頼が入りましたが、進み具合はどうですか?」
尾野「前の塗装をすべて剥離することになりました。1964年製の古いラミレスで、表面はセラック塗装でしたので、初めは表面処理だけで済むと思いました。ところが実際にはセラックの下に油性の厚い塗膜がかくれており、非常にたちが悪かった。すでに1回再塗装してあったようです。表面だけ処理をしても、時間がたつと少しずつ新しいセラックをはじいてしまうのです。」
田邊「結局その厚い塗料を、剥離剤は使わずに、ペーパーを使って少しずつ手で剥くことにしたのです。木部を削らないように注意しなくてはなりません。油性のべっとりした塗料なので、はがれた塗料がペーパーにこびりついてしまい、大変な作業になりました。」
本山「それは大変ですね。次の写真がその剥いたところですね?」

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尾野「普通はヘッドの穴まで再塗装しないのですが、今回は田邊さんがやろうというので(笑)、はがしています。」
田邊「表面板はこの写真ではまだ途中です。完全に木部の色を露出させるには、もう少し削らなくてはなりません。依頼主と相談して、そこまでやるか、それとも少しまだらになっても削らずに、色の濃い塗料で目立たないようにするか決めようと思っています。横と裏はハカランダで硬いので、木部との境でうまく止められるのですが、表面板はやわらかいのですぐに削れてしまいますから、細心の注意が必要です。」

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本山「こうして剥いたところを見ると、きれいで、まるで製作途中みたいですね。」
田邊「今はもうない、すばらしいハカランダです。」
ついに全塗装が完了しました。

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何点か調整して糸巻き(フステーロ)も交換、まるで新品のようです。色はセラックとしては濃い色(ナランハ)ですが、もともとラミレスの赤い色が濃かったのと、表面板がスプルースのため、ずいぶんイメージが変わりました。

本山「また同じような依頼が来たらどうしますか?」
尾野・田邊「。。。今回限りですね。。。」