指板を手鉋で削り取ったところです。熱と水分を加えて強引に剥がそうとすると、塗膜はもちろん、表板とネックを傷めてしまいます。機械を使えば、硬い黒檀の指板を効率よく削れて早いでしょうが、万一表板に機械を落としたり、倒したりしたら大変なことになります。そんなわけで、7ミリ近くあった指板をひたすら手鉋で削り取りました。黒檀が硬いので何回か刃を研ぎ直しました。最後ネック角により鉋の入らないところだけ、際鉋と、細心の注意を払い、ハンディルーターで整えました。

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ほぼきれいに指板を削り取った後の接着面です。アグアドは指板の接着面にノコ刃でキズをつけていたようです。キズをつけたり、溝を刻んだり、逆に表板の接着面は全て塗らなかったり、いろいろな考えや方法があります。

弦長補正のために入っていた2.5ミリのハカランダ材を取り除いたところです。もともとこの楽器はフレットでは弦長660ミリのところ、658ミリに補正してありました。そうすることで予備弦長にゆとりを持たせたようです。今回、オリジナルの660ミリに戻しました。トータルで660.5ミリで予備弦長が少なめになりますが、サドルの形を変えたりして、最終的に661~661.5ミリほどに調整しました。

指板の再接着です。ネック側が丸い上に、塗装を傷つけてはいけないので、強く万力を締めすぎないように気をつけます。

フレットを入れた後で、指板脇塗装準備です。指板を張った後、1ヶ月ほど寝かせてから、フレットを入れました。塗装の前に弦を張って試奏し、弦高等の確認をしてあります。

マスキングを外して、指板の表面にオイルを塗ります。やれやれです。

オリジナルのアグアドのナットがきつからず緩からずの位置に指板を接着してあります。まるで計ったようにピッタリです。

横から見たもの。

ネック材と指板の接合面です。今回の修理で美観に一番気をつけたのは、指板交換後の境目です。誰が見ても「指板を交換しました?」と言われるようではプロの仕事とは言えません。そのためにほぼオリジナルのアグアドの塗膜はそのままにしてあります。塗装の色合わせをした結果ではありません。鉋による削り取りは大変でしたが、無理にはがしていないので、このように全くわからないところまで調整することが出来ました。

アグアド特有の19Fの指板の削りを施しました。アグアドトーンといいますが、アグアドは本当に音色と、その変化にこだわっていたのが伺えます。

弦を張って完成です!! 音と共に、イメージどおりに仕上げられましたが、正直なところ、こうした修理ももうしたくないですね。