若手ながら人気製作家。
クラシックギターを知り尽くしたクラシックギター愛好家、コレクターだけでなく、プレイヤーもその作品を高く評価した。
その評価は、国内にとどまらず、訪日したスペイン人ギタリストが絶賛した。
現在製作中の海外からのオーダー品 バルベロI世モデルの製作過程をレポートします。
材選定
今回はアルカンヘル・フェルナンデスより譲り受けられた材料の中から、松、ローズを1組ずつ選ばせていただきました。
表板のスプルースは、内側から外側まで狭すぎず広すぎずの均一な木目で整った物を選びました。
大木であったことが想像できます。
裏板はローズウッドとして選別された材料ですが、叩くと上質なハカランダのような音の出る、硬質な物を選びました。
インドローズとはまた異なった樹種のように思います。
これまで私が実際に触ったことのあるバルベロは、スプルース/ハカランダ、スプルース/シープレスの2種類です。
今回使わせていただくローズウッドは、ハカランダと似た性質のように感じられます。
ぼんやりとでも手本とする音がイメージできるのは、製作する上で大切な手がかりとなり、助けになると思います。
このような素晴らしい材料を使い、製作できるというのは本当に貴重で幸せな機会です。
レポート口輪の取り付け
表板を接ぎ合わせ、適当な厚みに削った後、口輪を埋め込みます。
今回のモザイクは、サントスによく見られ、バルベロも使用していた、
白地に赤と黒の波が連なったデザインを採用しました。
洗練された力強さが感じられ、音のイメージと一致した美しさがあります。
表板の作製
鉋で板の厚さを調整します。
ペーパーを当てることで目違いや、不自然な凹凸をなだらかにします。
板自身が厚い薄いを感じないような、ストレスの無い、自然な凹凸になるよう心がけています。
縦横斜め各方向へのタワミ加減や、叩いた時の震え加減、等を手掛かりに調整し、設計図を写します。
響棒を接着し荒削りした後、力木を接着します。
同じく各方向へのタワミの加減を確認、手のひらに乗せて震え加減を確認、叩いたり曲げたり捻ったり光に透かしたり、等を繰り返し、完成時のウルフトーンの位置を意識しながら、仕上げていきます。
響棒、力木は表板と元々1つの物体であったかのような仕上がりを心がけています。
ネックの製作
ネックはセドロを使います。
ボディが軽量なスパニッシュギターに適した材料であると思います。
近年はネックと横板をクサビで固定する方法が一般的になっています。
接着が困難な木口部分の為、クサビを打ち込むことでしっかりと固定できますが、
バルベロは溝を切り、横板を差し込むだけのシンプルな方法で製作されていますので、今回は同じ方法を採用しました。
クサビに比べると膠が噛んだややアバウトな状態かもしれませんが、
その緩さも、音色に少なからず関係していると考えています。面取りや細かな造作は最後に行います。
各部の取り付け
横板を曲げ、ライニングを取り付けた後、それぞれを組み合わせていきます。
ネックと表板を接着し、ペオネスで横板を固定すると一気にギターの形になります。
この状態がとても美しいです。
裏板を閉じる時は、膠を付ける部分が細かく、広範囲に広がっていますので、室温を上げる等、接着不良が起きないよう色々と準備が必要です。
画像がありませんが、裏板は縄をかけて接着しています。
裏板を閉じた後、パーフリング、バインディングを巻いていきます。
各部接着
指板を接着し、駒を取り付けます。
駒の底面、内側から当てる板、共に表板の膨らみと同じ形状に揃え、接着します。
その後、ネック、ヒールを成形し、バインディング等各部の面取りを行い、塗装に移ります。
完成品演奏動画
“A mano a mano” by Alberto Cuellar. Daisuke Kuriyama Classical Guitar 2017