ジャン・ピエール・マゼ 2024年製 が入荷しました。

〔楽器情報〕
ジャン・ピエール・マゼ 製作 2024年製 No.60 新作です。表面板は松、横裏板はインディアンローズウッドの近年の彼の定型となっている仕様(2000年代最初までは横裏板が中南米ローズウッド仕様)。構造的にも音響的にも当然のことながらブーシェの影響を色濃く受けたものですが、彼はその製作哲学を深く柔軟に吸収しながら、あまり主張しすぎることのなく自らの個性と融和させており、それが自然他のブーシェフォロワーにはないカラーを生み出しているところが特筆されます。例えばダニエル・フレドリッシュやドミニク・フィールドといった同じ出自を持つと言える製作家たちがそれぞれ個性的なアプローチにより(フレドリッシュの音響工学の大胆な導入、フィールドのフレタ的強度の参照など)独自のアイデンティティを確立していき、ブーシェ的なものを自らの文脈の中にアクロバティックに変異させていったと言えるのですが、マゼにおいてそれはいかにも親しい友人同士の会話から自然に生まれたかのような親密さとフランス的な洗練があり、なによりもそれが彼の楽器を唯一なものとしています。

口唇よりも先に喉の奥の音が出てくるような軽く前のめりな発音がなんともフランスの楽器らしい。軽い粘りを伴いながら自然につながってゆくような音と音の連なり、中低音~低音のふんわりとした響き、色彩を抑えつつも適度なコクと艶を備えた音像の繊細な力強さなどはやはり特別な魅力を放っています。表情もまたほのかに翳を含んだロマンティシズム、気取りのない知的さ、時にチャーミングなところもあり、こうしたある意味複雑な情感を自然に表出してしまうところもこのブランドならではでしょう。また機能面においても両手共に発音のリニアニティが高く、ほとんど指が動くままに音が出てくる感覚があります。

全面セラック塗装仕上げ。ネックはやや薄めのDシェイプ。弦高値は3.0/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.0~3.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することも可能です。ブリッジ弦穴はダブルホールになっています(通常の巻き方も可能です)。糸巻はスローン製のleaf 柄プレートタイプを装着。重量は1.69㎏。
本作はマゼ氏ご本人により当店に直接持参された一本で、付属ケースは氏が本器を運ぶのにプライヴェートに使っていたBAMケースが付属しています。

詳細は上記画像をクリックしてご覧下さい。