ポール・シェリダン 2025年製が入荷しました。

[楽器情報]
本作は2025年 シリアルNo.256 新作です。表面板はイングルマンスプルース、横裏板はオーストラリア固有産のジャラ材(Jarrah)を使用、表面板はマットな仕上がりのオイル フィニッシュで木材の質感が際立ち、対照的に独特の赤みと野趣あふれる木目が印象的なジャラ材の横裏板は深く艶を湛えたラッカーで仕上げられています。そのジャラの裏板センターの接ぎ部分と横板ボトム部の接ぎ部分には異なる木材(これもまた特徴的)による大胆なスクエアのインレイが施されており、表面板ロゼッタにも同じ材を使用したスクエアなデザインをあしらうことでグラフィックな統一感を演出しています。指板は表面板から少し浮き上がったようないわゆるレイズドフィンガーボード、裏板はアーチバックとなっておりこのカーブに沿うようにしてネックヒールもわずかに傾斜しているところ(シドニーのオペラハウスを思わせなくもない)は慎ましくも洒落た趣向となっています。さらに奏者の右ひじ部分にはおそらくはこれもジャラ材を使用したであろうアームレストが装着されています。これら全体が優美な曲線とリズミカルな立体感を生み出しておりこの点でもフォトジェニックな外観となっていることが特筆されます。

ボディ内部はグレッグ・スモールマン的な構造原理に則って設計されており、これ自体は現在はドイツのマティアス・ダマンらによって開発されたダブルトップ構造と並びモダンギターの二大潮流とされているものなのですでに広く知られるところとはなっているのですが、しかしながらやはり、ほとんど突然変異的と言ってよいほどの大胆さと新しさで、その緻密な構築性にはいまだ目を瞠らせる、一種異様な迫力があります。

安定性の高いタスマニアンオーク(この材もオーストラリア原産)によるネックはボルトオンでボディに組み込まれています。弦長はこのブランドの標準設定である640mm、薄めのDシェイプのネックは握りやすく、弦高値も初期設定で2.8/3.9mm(1弦/6弦 12フレット、サドル余剰は2.0mm)で弦の張りも中庸で左手は押さえやすく、高い演奏性が追求されています。また横板のネックヒール両脇のところに直径1.8cmのサウンドポートが1箇所ずつ設けられており、演奏中の奏者自身へのプロジェクションが確保されています。

ラティス構造のギターらしい、ドラムを叩いたようなパーカッシブな感触の素早い発音と空気感、乾いた木質の音、非常な音圧の高さといったいかにもオーストラリア派らしい特徴を備えつつ、シェリダンのギターが特徴とするのは奏者のタッチに対する十全な反応性であり、そのリニアニティは実に高い。スモールマンをはじめとするラティス構造のギターは音が勝手に、パーカッシブな発音のままに鳴り過ぎてしまうようなところがあり、奏者はそのコントロールに難儀することがあるのですが、シェリダンにおいては機能的にも表現的にも奏者の意のままに反応し、音楽的な充実が得られます。例えば弱音から長く時間をかけて少しずつクレッシェンド持続してゆくこと、これは伝統的スタイルのギターではかなりの技術的な熟練が求められるところですが、シェリダンの本作においては全くストレスなく音楽的な密度を調整しながら表現することができ、この感触は奏者としてなかなか感動的。音もよく歌い、実は表情豊か。そこには機能の充実を志向しながらも適切な抑制を働かせる、シェリダンならではの美学があります。

モダンギターの良品を探している方、またモダンギターに対する表現性の面での不満をぬぐえなかった方にもぜひお試しいただきたい一本。現在3年以上のウェイティングリストを抱えているという人気のブランド、充実の新作です。

詳細は上記画像をクリックしてご覧下さい。