カレル・デダイン 2025年製 が入荷しました。

[楽器情報]
カレル・デダイン製作のエンリケ・ガルシアモデル、2025年新作です。
彼が自身のオリジナルモデルのほか、名工へのオマージュモデル、さらにはその深い知見に裏打ちされた瞠目すべきインスパイアドモデルを展開していますが、これは文字通り彼の敬愛する伝統的なスタイルで製作された名品から彼がinspiredされ、それを再解釈、再構築したモデルとなります。本作はそのInspired model として製作された一本。

エンリケ・ガルシア(Enrique Garcia 1868~1922)という、マヌエル・ラミレスに学び(これついてはホセ・ラミレス1世という説もあります)、バルセロナの地でフランス的な製作文化とトーレスの伝統とを融合させ全く独自のギターを作り上げてバルセロナ派の中心人物となり、さらにはその影響を彼の死後もあのイグナシオ・フレタ1世や南米ギターの音響キャラクターの形成にまで寄与したであろう、このあまりにも謎に満ち、超時代的で、そして文字通り稀代の名工のギターをオマージュであれインスパイアドであれ製作することの困難は計り知れません。それはその個性的音響という感性に関わる部分と、生涯300本のギターを製作したと言われながらもその実作に接することの極めてまれなブランドであるという物理的な制約ゆえなのですが、謎と稀少性の両方においてさらに上をゆくビセンテ・アリアスのギターにさえ知悉し、同様にそのinspired model を見事に作り上げてしまったカレル氏ほどにいま世界で相応しい製作家もいないでしょう(イタリアのベテラン製作家、Andrea Tacchi 氏がやはり素晴らしいガルシアモデルを製作していることは特記しておく必要があります)。

ガルシアというと滋味溢れるいかにも渋い響きが思い出されますが、本作においてカレル氏はオリジナルに肉迫しながら、彼らしい知的な見通しの良さと素朴さの中に自然に着地させており、親密かつ力強い1本となっています。そしてその素朴な響きの中に、あのガルシア特有の異様さへの可能性も確かに感じさせるところも、カレル氏の知見だけにとどまらないアーティスト性ゆえの共振を聴くことができ、その点でも本作が稀有な一本だと言うことができます。

高い硬度と柔軟性を併せもつ見事な松材の特性を活かした強い粘りのある発音で、一つ一つの音像が刻印されるような確かさで現れます。音像の肌理そのものは木質のさらっとした触感で、音響はボディの奥底からまるで太鼓を叩くようにパワフルに、しかし最高度の洗練と抑制をもって鳴ります。その深さを聴かせるので、実際には余計な残響は一切ありません(このあたりはいかにもガルシア的)。そして特に中低音から低音の太く彫りの深い、そして一種異様なアイデンティティを有しながらも不思議に全体と調和している響きの在り方もまたガルシア特有のもので、あの個性的な音響設計を見事に再現しています。そして表情、その多感さと繊細さは、素晴らしく音楽的でロマンティックであることも特筆すべき性質の一つとなっています。

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