アルカンヘル・フェルナンデス 1971年製 が入荷しました。

[楽器情報]
アルカンヘル・フェルナンデス 1971年製 クラシックモデル Usedの入荷です。ポリウレタンの塗装でやや濃い目のオレンジ着色がされた松の表面板などの外観的仕様は同じスペイン、マドリッドで当時マーケットを席巻していたホセ・ラミレスの影響が見て取れ(実際にアルカンヘルは’Para Casa Arcangel’ ラベルで同じ工房のマルセロ・バルベロ・イーホをはじめ、マヌエル・カセレスやペドロ・バルブエナなどラミレス工房での優秀な職人を採用して工房品の拡販を行っていたなどマーケティング戦略的にもかなり共通する部分、というかアルカンヘル本人のラミレスへの目くばせを強く感じさせるところが多くあります)、同時に内部構造においても彼の定石となっている力木構造(師マルセロ・バルベロ1世から受け継いだもの)とは異なるものが本作では採用されています。横裏板はブラジリアン・ローズウッド仕様ですが、アルカンヘルがクラシックモデルの基本仕様として設定していたブラジリアン・ローズウッドは彼自身の厳しい選定を経たどれも極上のもので、本作のブラジリアンもやはり素晴らしく良質なものがセレクトされています。

アルカンヘルらしい、音圧のあくまでも自然な高さとその迫力、「揺るぎない」重心設定と低音~中低音~高音の自然で完璧なバランスがまずは見事。やや強めの粘りと反発感をもった発音は撥弦の瞬間に充実し整った音像となって現れ、その点としての持続の濃密さゆえに旋律が実にすっきりと、しかし有機的に線としてのうねりを生み出してゆきます。響箱が十全に鳴っていますが余計なエコー感はなく、そしてそれゆえに和音や多声メロディーにおける各音各声部のアイデンティが際立ち、それが上述の完璧な音響バランスの中で表れてくるので、奏者の楽曲の和声的な構築と彫りの深い表現の要求に十全に応えてくれます(これはアルカンヘルのギターすべてに共通する音響機能的特徴だと言えます)。決して華美に過ぎず渋めの音色ですが、その繊細な変化の中にスペインギターならではの叙情がたっぷりと聴かれる(表現できる)ところがなんとも心憎い。

先述の構造的な相違からか、本作ではアルカンヘルの、あのあまりの適切さゆえに一切の妥協を排したようなストイックな厳しさとは趣を異にして、音像にはやや角の取れたふっくらとした触感があり、発音における反発感も比較的に軽めなものなので、どこか柔和な優しさを感じさせる魅力的な一本となっています。

表面板のちょうど1弦12~19フレットの真下部分にはスリットが入れてありますが(指板の下に隠れた部分なので表からは見えません)、これは指板と表面板が接するエリアの木の伸縮による割れ防止のために製作時に意図的に処理されたもので、出荷後に生じたものではありません。

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