受け継がれていく、
伝統。
伝統とは積み重ねられて来た技法・形式の踏襲だけではなく、
『時にその時代の新たな「かたち」も取り入れながらも、そこから立ち現われて来るものは、
間違いなく脈々と流れ続けている本流に確実につながっている様』と言えるかもしれません。
自分たちの作る異国の楽器「ギターラ エスパニョーラ」が、
トレースから始まった脈々と流れる本流に繋がっている、繋がってみせるという気概を持ち、
製作を続けている日本の製作家たちをご紹介いたします。
伝統工法を生んだ巨匠たち
ギタリスト、そして作曲家として偉大な足跡を残したフランシスコ・タレガ。
彼のその才能を開花させたと言っても過言では無い楽器、「アントニオ・デ・トーレス」
スパニッシュギターと巷で呼ばれる楽器は、スペインに生まれたこのギターに端を発しています。
そしてトーレスの優秀さを認め、その工法やスタイルを研究して、ボディを少し大型化した独自のスタイルを確立していった「マヌエル・ラミレス」
卓越した演奏と音色で聴衆も魅了し、クラシックギターの地位を不動のものとしたアンドレス・セゴビア。
その彼を一流の演奏家に押し上げて行く大きな力となった楽器、「サントス・エルナンデス」
マヌエル・ラミレスの後継者としてサントス・エルナンデスと並び称される「ドミンゴ・エステソ」
スペインで彼らが継承したこの工法はやがて、ドイツの「ヘルマン・ハウザー」、フランスの「ロベール・ブーシェ」へと連なり、その伝統の技はヨーロッパから全世界へと伝えられて行きます。
アントニオ・デ・トーレス
1817~1891
アントニオ・デ・トーレスは、古く長い伝統を持つスパニッシュギターの製作法を研究、豊かな音量と多彩な音色を生み出す大型のボディと構造を創始し、コンサート・ギターを確立して現代ギターの礎を築いた、ギター製作界のストラディヴァリと称される巨匠である。
1817年アルメリア市郊外で生まれた彼は、21才の頃から市内で指物大工の職につき木材に関する豊かな知識と木工技術の基本を身につけ、1842年頃にはグラナダに移り住み身につけた木工技術を生かしてホセ・ぺルナスの工房でギター製作を始めている。
その後1845年最初の夫人を病で失った後は独自に演奏法や製作技法の研究に専念し、1852年からセビリアに移りセラへリア通り32番地に自身の工房を開設している。そして1870年頃ギター製作のため私財を使い果たした彼は、セビリアからアルメリアへ戻り陶器と硝子製品の店を出すことになるが、ギター製作を再開したのは1875年になってからで、1882年には生地のアルメリア市郊外に移り他界するまで製作を続けた。
因みに52年から69年までのセビリア時代を彼の製作における第1期、この75年から没年の92年までが製作の趣きが異なる第2期と位置付けられ、No.1からギターに連続番号を付しNo.155が最終となっている。
トーレスのギターを最初に使用した演奏家はフリアン・アルカスで、彼はトーレスの良き友として共に仕事や旅をして、この天才を生涯励まし続けた。そしてギタリスト、作曲家として最も偉大な一人フランシスコ・タレガもまたトーレスを愛用し、彼のギターによってその才能を開花させ、後進への道を示したのである。
伝統工法を受け継ぐ
邦人作家たち
スペインのアンダルシア地方に端を発した19 世紀ギターからスパニッシュギターへの変遷は
スペイン伝統工法として実を結び、世代を越え、国境を越えた一つの文化となって伝承され、
今日本からも未来へと続く新たな物語が始まろうとしています。
田邊 雅啓
1974年群馬県生まれ。幼少の頃より音楽と工作に深い興味を持ち続け、20歳の時にクラシックギターの製作を志す。法政大学卒業と同時に石井栄に師事して製作技法を学び、同工房にて自作品として140本近くを製作。その後2001年に渡欧して各地の弦楽器工房を訪問すると共に、ホセ・ルイス・ロマニリョスのマスタークラスに参加し、スペインギターの伝統的な製作方法に触れたことで自らの方向性を確信する。帰国後に栃木県足利市に独立して工房を構え、マスタークラスで出会った尾野薫にアドバイスを受けながら製作研究に一年余を費やし、2002年にその後の彼のメインモデルの一つとなるロマニリョスモデルを発表。その後2004年に再度渡西した折には、同地の名工達の工房を訪ね更に見識を深め、特にアルカンヘルからは助言と共にその製作姿勢に多大な影響を受けている。師の教えを実直に守り、ひたすらに良い音を求めるその製作態度を貫き、年間わずか5~7本前後と製作本数が限られるため、現在新作が最も待ち望まれる製作家の一人である。どんな細部も揺るがせにしない緻密で繊細な手と、持って生まれたしなやかな感性で製作された彼の楽器は、伝統に深く立脚しながらも新たな音響のニュアンスを感じさせる作品として高く評価され、2018年にはNHKの人気番組で工房での製作風景が放映された他、新聞や海外のギター専門誌からの取材オファーを受けるなどメディアからも注目されている。
トーレスモデル
製作家自ら、最高のポテンシャルを具現化することができると自負するトーレスモデル。
フランスの名工ロベール・ブーシェの初期の作品を規範とし、本人が残した手稿の製作メモを仔細に研究して実現した、トーレス=ブーシェ タイプとも言えるこのモデルの音色は、まさにトーレスがもし新品だったらと想像を喚起せずにはおかないもの。
絶妙な分離感、適度なサスティーン、雑味の無い和音のまとまりなど、音響的なバランス感が見事で、演奏した時にはポリフォニックな立体感が際立ち、低音、中低音、高音それぞれがしっかりと歌うように響きます。
撥弦するその指先から直に立ちあがってくるような生々しさがありながら、適度な硬質と粘りが心地よい、清冽とさえいえる音響を持つ楽器です。
オーダーメイドのご案内
こちらで紹介した邦人製作家へ相談し、依頼し、選び、 あなたのためだけの作品をあなたと共同で創りあげる
我々製作家は、響板の厚み、力木の高さ、ネックの形状まで、全てにおいてコンマミリ単位で、感覚によって仕上げています。
その最終決定に加わる依頼者の存在と意思。
依頼者を思い歩み寄り作られた、世界に一つだけのギターがオーダーメイドの全てです。
田邊雅啓
ご質問等ありましたら 【お問合わせ】ボタンを押してお問合せください。
各製作家のご希望のモデルの、材料やスペック等のシミュレーションが出来るサイトのご紹介ほか、
価格、納期等お問合せ内容に沿ったご案内を、メールにて差し上げます
メンテナンス・リペアのご案内
楽器にとってメンテナンスは、非常に大切です。
特に、オールドや手工のギターの場合は常日ごろ、楽器を健康な状態に保つ様、練習や演奏後のお手入れ等に注意を払う必要があります。
次にギターにとって大切な事は、出来る限り良く演奏をすることです。 弾くことで、楽器に振動が加わり内部の状態が変化して、湿度の変化等を抑えることができます。
更に、伝統工法で製作した楽器の場合は、膠等が経年変化によって劣化して内部の力木の接着が緩んだり、はがれたりする場合があります。 定期的に楽器のヘルスチェックをすることをお勧めします。
アウラでは、ヘルスチェックを無料で行っています。 また、修理が必要な場合のお見積もりも無料です。 お気軽にお問い合わせください。
アウラギターカタログ
アウラギターデジタルカタログをオンラインでご覧いただけます。
また、冊子でのカタログをご希望の方には郵送にて配布させていただいております。
下記のギターカタログ請求フォームより必要事項を入力し、送信してください。
なお、冊子での資料送付につきましてはご到着までに日数を要する場合がございますためご了承ください。